社内から「AIエージェントを作り導入したい」と言われて、判断に迷っていませんか。

作り方そのものは難しくありません。実際に(Copilot Studio で)作ってみると、サインインからテストまでの操作は15分程度で終わります(N=1ですが、この記事の姉妹記事で実測しました)。ノーコードで、かつプログラミングの知識も要りません。

難しいのは、作る前に何を確認すべきかです。

Copilot Studio には既定のまま進むと作成者の意図と違う状態になる設定が、少なくとも3つあります。この記事では、その3つと、自社の状態を確認する手順を整理します。

あくまで本稿は「危険だから止めておこう」という記事ではありません。
3つとも、確認して知っておけば制御できるものです。ただし確認しないまま全社に広げると、後から戻すのが面倒になりますし、何よりリスキーです。

【結論】確認すべきは3つ

この3つを、順に見ていきます。

1. この記事でわかること

読み終えたときに、次のことができるようになります。

  1. 自社のエージェントがどのハーネス(後述)で動いていて、課金がいつから始まるかを確認できる
  2. Web 検索が既定で有効なことと、それがデータの流れに何を意味するかを説明できる
  3. AI が提案するナレッジソースに何が出てくるかを把握し、権限の観点で判断できる

この記事のスコープ外

  • エージェントの作り方の手順 → 姉妹記事「Copilot Studioで最初のAIエージェントを作る」で扱います
  • DLP や環境戦略の設計 → 統制の設計そのものは別のテーマです。いずれ書いていく予定ですが、この記事では「何を確認すべきか」までを扱います
  • 料金の詳細な見積もり → 既定設定の話に必要な範囲に絞りますが、これも随時書いていく予定です。

2. 前提:Copilot Studio には「ハーネス」が3種類ある

3つの既定設定のうち①がハーネスの話なので、先に用語を通しておきます。

ハーネスとは何か

エージェントを作るとき、登場するものは3つあります。

  • あなたが「何をさせたいか」を決めます(指示、ナレッジ、公開先など)
  • AIモデルが実際に考えて文章を作ります
  • その2つの間に立つのがハーネスです

ハーネスは、いつモデルを呼ぶか、何を渡すか、返ってきた内容をどう扱って次に何をするかを取り仕切ります。エージェントの「動かし方」そのものだと考えてください。
やってほしくないことをプロンプトで「やらないでね」としておくのではなく、そもそもAIがどれだけ頑張ってもやりようのない状態にしておこうという考え方です。

ここが分かれていることが、なぜ重要なのか。同じ「エージェント」という言葉でも、裏で動くハーネスが違えば、できることも課金の仕組みも公開できる対象ユーザーも変わります。 最初に確認する必要があります。

2026年8月時点で、Copilot Studio には3種類あります。

3種類のハーネスと、それぞれの課金の始まり方。(2026年8月21日 公式ドキュメントで確認)

公式ドキュメントは、標準ハーネスが適した例として「社内のヘルプデスク体験のように、よくある質問に答えたり、簡単なリクエストをワークフローでルーティングしたりするケース」を挙げています。社内FAQに答えるエージェントなら、標準ハーネスが選択肢に入ります。

覚えておいてほしいのは、「Copilot Studio の課金」という一枚岩の話ではないという点だけです。

3. 既定設定①:課金が始まる時点はハーネスで変わる

標準ハーネスは公開後、GitHub Copilot ハーネスはビルド開始時から

公式ドキュメントの記述は明確です。

標準ハーネスは公開後、GitHub Copilot ハーネスはビルド開始時から課金されます。(2026年8月21日 公式ドキュメントで確認)

ここまでだけを読むと「GitHub Copilot ハーネスは触った瞬間からメーターが回る」と受け取れます。ただし、そうではありません。 3つの条件があります。

条件1:対象は「LLM を使う作成操作」

ライセンスガイドの脚注に、対象が限定されています。

クレジットを消費するのは、自然言語による作成、評価、プレビューといった LLM を使う操作です。手動での設定、LLM を使わない設定は消費しません。エディタを開いただけで課金される、という話ではないということです。

条件2:開発者環境と試用版環境には期限付きの猶予がある

これがいちばん見落としやすい条件です。

つまり、開発者環境と試用版環境は、2026年9月1日に使用量ベースの課金へ移行すると公式に記載されています。 移行前の期間、これらの環境での消費は「未請求の Copilot クレジット」として計上されるだけでした。

2026年9月7日の時点で、この日付は過ぎています。ただし公式ドキュメントの記述は移行前のままです。 上に引用した節はいまも「移行します」と将来形で、期日前に済ませる6項目の手順が残っています。移行が完了したかどうかを示す記述は、公式にはありません。

**ここで重要な制限があります。**この記述の対象は「開発者環境」と「試用版環境」です。既定環境(default)や本番環境がこの移行の対象に含まれるかは、公式ドキュメントに記述がありません。 自社の環境がどれに当たるかは、後述の手順で確認してください。

条件3:Microsoft 365 Copilot ライセンスの対象外

GitHub Copilot ハーネスについて、公式ドキュメントはこう書いています。

「Microsoft 365 Copilot を契約しているから無料」は成立しません。対象範囲は機能ごとに違います。公式ドキュメントの表から抜粋します。

機能(抜粋)

  • 標準ハーネスのエージェント:はい(Microsoft 365 チャネル内)
  • Workflows:はい(ライセンスユーザーが標準ハーネスのエージェント内で実行する場合)
  • コンピューターの使用(CUA):いいえ。 すべての使用量に対して課金
  • GitHub Copilot ハーネスのエージェント:いいえ。 作成もランタイムも、ライセンスの有無に関係なく課金

4. 既定設定②:Web 検索が既定で有効になっている

エージェントを作ると、公開 Web を参照する状態から始まる

エージェントを作成した直後の画面を見ると、「Web 検索」という項目があります。

2026年8月21日に実機で確認した時点において、デフォルトで検索が有効な状態でした。

エージェントを作成した直後の状態です。下段の「Web 検索」が有効になっています。上段の「提案:」は AI が提案したナレッジソースで、ファイル名はマスキングしています。

社内FAQ に答えるエージェントを作ったつもりでも、既定のままなら公開 Web も参照できる状態から始まります。

公式の画面が明示している注意書き

これだけなら「精度の問題」で済みます。ただ、公開 Web サイトをナレッジに追加する画面には、次の注意書きが常時表示されています。

この文が対象に含めているのは、公開 Web サイトの追加だけではありません。 「Web 検索の有効化や」と書かれています。つまり、Web 検索が有効になっていること自体が、この注意書きの対象です。

情報システム部門やセキュリティ担当の立場では、仔細な課金額より重要な
論点になるはずです。

社内情報のみを根拠にしたいエージェントであれば、無効化しておきましょう。
なお、根拠の範囲に関わる設定は Web 検索だけではありません。生成 AI 設定には「根拠のない応答を許可する」という項目があり、これも既定でオンです。この設定を実際にオン・オフして試した結果は、姉妹記事「Copilot Studioで最初のAIエージェントを作る」で扱っています。

5. 既定設定③:AI が提案するナレッジソースは社内ファイル

「提案:」は、作成者が過去に触ったものから出てくる

Copilot Studio では、やりたいことを自然言語で書くと、AI が名前・説明・指示を生成してくれます。同時に、ナレッジソースの候補も提案してきます。

実機で並んだ5件は、すべてテナント内に実在するファイルでした。前掲の画面で「提案:」と付いている5行が、それです。それぞれに「追加」「無視」のボタンが並びます。
どこから出てくるのかは、公式ドキュメントに書かれています。候補になるのは「以前のエージェントの 1 つで使用する」「あなたと共有されているエージェントで使用」「Office 製品の操作中に以前使用」の3つ。つまり作成者が過去に触ったものです。
種類も4つに限られます。Files / Sharepoint / 公開された Web サイト / Dataverse です。公式が公開Webサイトも挙げているので、テナント内のファイルに限るとは考えないでください。実機の5件がすべてファイルだったのは、あくまで観測です。

追加したファイルは Dataverse に格納される

ファイルをアップロードする画面には、次の説明があります。

2点、補足です。

  • 対応形式は「テキストベース」と書かれていますが、実際はもっと広いです。公式ドキュメントは Word・Excel・PowerPoint・PDF・テキスト・HTML・CSV・XML・OpenDocument・EPUB・RTF などを挙げています。対象外なのは画像・音声・ビデオ・実行可能ファイル、512MB を超えるファイル、機密ラベルやパスワードで暗号化されたファイルです
  • 格納先は Dataverse です。ナレッジのファイルが増えれば、Dataverse の容量に影響します。容量にはテナント既定の割り当てがあり、超過分は有償です

アップロードしたファイルには、利用者ごとの権限チェックがない

ここが、この章でいちばん重要な点です。
「Dataverse にコピーされるから権限が失われる」という説明を見かけますが、それは正確ではありません。 権限の扱いは、どの経路で追加したかで変わります。
PCからファイルをアップロードした場合、クエリ時の権限チェックはありません。 SharePoint / OneDrive からアップロードした場合は、Dataverse にコピーされたうえで、元の SharePoint に問い合わせて権限が検証されます。SharePoint コネクタを使う場合も検証されます。
公式ドキュメントのナレッジソース一覧は、これを認証列で示しています。SharePoint・Dataverse・コネクタは「エージェント ユーザーの Microsoft Entra ID 認証」。アップロードしたドキュメントだけが「なし」です。
同じページの注記には「ナレッジ ソースに対するエージェント ユーザー認証とは、特定のユーザーがエージェントに質問すると、エージェントは特定のユーザーがアクセスできるコンテンツのみを表示することを意味します。」とあります。認証が「なし」のアップロードファイルには、この絞り込みが働きません。
別のページには「この知識は、エージェントの認証済みユーザーおよび非認証済みユーザーと共有できます。」という記述もあります。
つまり、PCから直接アップロードした資料の内容は、そのエージェントを使える人に表示されうると考えてください。利用者全員が見てよい資料だけをアップロードします。 個人情報・顧客情報・認証情報を含む資料は、そのまま追加しないでください。
なお、機密ラベル(社外秘・極秘)やパスワード保護が付いたファイルは、そもそもアップロードできません。リスクが顕在化するのは、ラベルが付いていない資料のほうです。「ラベルを付けていないから大丈夫」ではなく、逆と考えてください。

6. 自社の状態を確認する

ここまでの3つを、自社の環境で確認する手順を記載します**。**

ハーネス別にエージェントを棚卸しする

既存のエージェントがどのハーネスで動いているかは、Power Platform 管理センターで一覧できます。

  1. Power Platform 管理センター(`https://admin.powerplatform.microsoft.com/`)にサインインします
  2. ナビゲーションで「管理」を開き、製品セクションの「Copilot Studio」を選びます
  3. 「エージェント」タブの一覧で「Harness」列を見ます

期待結果として、各エージェントのハーネスが GitHub Copilot / Standard / Copilot Chat のいずれかで表示されます。

Harness 列でハーネス別に棚卸しできます。作成元によってハーネスが変わることが分かります。エージェント名・所有者・組織名はマスキングしています。(2026年8月21日 実機で確認)

実機で確認したときに役立ったメモがありますので、記載しておきます。

  • 一覧はダウンロードできます。 棚卸しの記録として残せます
  • インベントリの反映は即時ではありません。 実測では、新しく作成したエージェントが一覧に現れるまで約30分かかりました。遅延はありそうなので、ここで混乱した際はしばらく待ってみるといいと思います。

環境の種類を確認する

3章の条件2(開発者環境・試用版環境の猶予)に自社が該当するかを判断するために、環境の種類を確認します。

  1. 同じ管理センターで「管理」→「環境」を開きます
  2. 一覧の「種類」列を見ます

実機で確認した環境では「既定」「Microsoft Teams」「実稼働」が表示されていました。「開発者」や「試用版」でない環境が、9月1日の移行の対象に含まれるかは公式に記述がありません。 ここは確認できた事実と、確認できていない事実を分けて把握しておいてください。

容量への影響も見ておく

課金の話で見落としやすい点が2つあります。どちらも公式ドキュメントの記述です。

  • 環境レベルの割り当てと「テナント容量からの引き出し」は、プリペイドの容量パックのクレジットを消費します
  • Copilot Studio の消費は、Cowork や Work IQ など Microsoft 365 側の体験で使える前払い容量を減らします

Copilot Studio だけを見ていると、Microsoft 365 側の容量が減っていることに気づきにくくなります。両方の管理センターを確認してください。

7. まとめとネクスト

確認すべき3つを、もう一度整理します。

3つとも、確認すれば制御は難しくありません。


この記事で確認したこと

ハーネスと課金について

  • Copilot Studio には標準・GitHub Copilot・Copilot チャットの3種類のハーネスがあり、エージェントの「動かし方」が違う
  • 課金が始まる時点も違う。標準ハーネスは公開後から、GitHub Copilot ハーネスはビルド開始時から
  • ただし GitHub Copilot ハーネスの課金対象はLLM を使う作成操作に限られる。手動・非LLMの設定は消費しない
  • 開発者環境と試用版環境は2026年9月1日に使用量ベースの課金へ移行すると公式に記載されている。 移行前は「未請求の Copilot クレジット」として計上されていた。日付は過ぎているが、公式の記述は更新されていない(2026年9月7日確認)
  • 既定環境・本番環境が移行の対象に含まれるかは、公式ドキュメントに記述がない
  • GitHub Copilot ハーネスの使用は Microsoft 365 Copilot ライセンスに含まれない。作成もランタイムも、ライセンスの有無に関係なく課金される

Web 検索について

  • エージェントを作成した直後は、Web 検索が有効な状態だった(2026年8月21日 実機で確認)
  • 公式の画面が「Web 検索の有効化や公開 Web サイトのナレッジへの追加には…組織のコンプライアンス境界外にデータが送信される可能性があります」と明示している
  • 無効化はトグル1回で、保存操作は不要
  • ただし無効化すれば Bing による典拠が一切使われなくなるかは、画面の文言からは読み取れない

AI のナレッジ提案について

  • 提案されるのは、過去に使った資料・共有されたエージェントの資料・Office で扱ったもの。種類はファイル / SharePoint / 公開Webサイト / Dataverse の4つ。テナント内のファイルとは限らない
  • 実機では、提案された5件はいずれも入力した題材と無関係な業務ファイルだった
  • 提案に出るのは作成者が閲覧できるファイル。エージェントに追加すれば、その利用者に情報が届きうる。PCからアップロードしたファイルには、利用者ごとの権限チェックがない(SharePoint 経由は元の権限を検証する)
  • 追加したファイルは Dataverse に格納される。容量に影響する
  • 対応形式は Word・Excel・PDF なども含む。機密ラベルやパスワード保護が付いたファイルはアップロードできない

自社の状態の確認方法

  • Power Platform 管理センターの「管理」→「Copilot Studio」で、Harness 列を見ればハーネス別に棚卸しできる
  • ブラウザ幅を広げると列が増える(所有者・コネクタ・モデル・環境)
  • インベントリの反映は即時ではない。実測で約30分
  • 環境の種類は「管理」→「環境」で確認できる
  • 環境レベルの割り当てと「テナント容量からの引き出し」は、プリペイドの容量パックのクレジットを消費する
  • Copilot Studio の消費は、Cowork や Work IQ など Microsoft 365 側の体験で使える前払い容量を減らす

次に決めること

この記事の範囲を超えますが、確認が済んだら次はここを決める段階になります。

  • どの環境で、誰にエージェントを作らせるか
  • どのハーネスを自社の標準にするか
  • 外部へのデータ送信をどこまで許容するか
  • 公開の承認を誰が行うか

この記事はここまでです。 この先には「では、どの環境で誰に作らせるか」「どのハーネスを標準にするか」「DLP をどう設計するか」という設計の話が続きます。それは別のテーマなので、この記事では踏み込みません。いずれ書いていきます。

実際に1体作ってみたい場合は、姉妹記事「Copilot Studioで最初のAIエージェントを作る(操作は5分)」で手順を扱っています。この記事で挙げた3つを踏まえた設定で進める構成にしています。

ご相談

Copilot Studio を全社に広げる前の整理でお困りの場合は、次の情報をもとに現状を把握し、決めるべき順序を整理します。

  • 既存エージェント
  • 環境の構成(開発者・試用版・既定・本番)と、それぞれで何を許可するか
  • エージェントの作成権限を与える範囲
  • 外部へのデータ送信を許容する範囲と、その判断根拠

お問い合わせフォームからご連絡ください。


参考にした情報

すべて 2026年8月21日に確認しています。

  • Microsoft Learn: ハーネスを選びましょう
  • Microsoft Learn: 使用率に基づく請求の概要(GitHub Copilot ハーネス)
  • Microsoft Learn: 標準ハーネスエージェントおよびエージェントフローにアクセス
  • Microsoft Learn: GitHub Copilot ハーネスを使用してエージェントのコストを管理する
  • Microsoft Copilot Studio Licensing Guide, August 2026
  • 実機確認: Copilot Studio および Power Platform 管理センター(2026年8月21日)

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